「バッシュ、お話があるの」
真剣な面持ちでそう言われた。
自分は何か彼女を怒らせるような事をしただろうかと考えこんでしまった。
「無理なら、後でも構わないのだけど・・・」
「いやそうではないんだ」
「じゃあ」
「」
「なに?」
「先に謝るべきだろうか・・」
「どういうことかしら??」
そう訪ねたの表情は険しくなった。
Sweet Kiss BASCH
「義理???それとも本命???」
部屋に入るなりいきなりそう聞いてきた彼女。
怒られないよう謝ろうとした筈なのに怒られているような状況。
「どっちなの??」
つとめて私は優しく問う。
今日に限って彼が謝らなければならない状況を考えてみた結論がこの質問だった。
そう、私以外の『誰か』から私よりも先に受け取ったということではないだろうか。
彼は優しいから断ることも出来なかったと楽な方に考える事も出来たはず。
だが、突いて出た言葉がこれだった。
彼の事となると極端に狭くなる私の心の表れ。
「見せてみて」
掌をずいっとバッシュの前に出す。
「一体何の事だ?」
「何処かに隠したのね」
「どういう事だ??一向に話が――」
進んでいない。というよりも悪化しているのではなかろうか。
「どうして隠すの」
「隠すも何も意味が分からないんだが・・」
「しらを切るなんて。。。。つまりそっちの方が大事って事なんだ・・・」
急に俯き悲しみに歪むの顔を見てぎょっとするバッシュ。
「ッ―ちょっと待ってくれ、君は」
「嫌いになったのならそうだって言ってくれればいいのに・・・・どうして」
弱弱しい声に居ても経ってもいられず体をぎゅうと力任せに抱きしめていた。
背を包むように腕を回した時に見えた『それ』に気がつきバッシュはやっと彼女の質問を理解する。
「―・・・・君は怒っていたんだよな?」
言葉はなくコクリと頷く。
「次にした質問の答え何だか・・・・・・・・・」
そっとの持つ包みに手を伸ばしてバッシュは恥ずかしそうに答える。
「本命だと思っても良いだろうか・・・?」
その言葉に自身も自分の勝手な思い込みだったのだと分かり彼の胸の中で小さく笑った。
貰ったチョコを食べているバッシュの顔を見ながらが呟く。
「ヤキモチ焼かせた」
「いや・・・・そういう訳では」
「じゃあ、どうして?」
近寄り眉を顰める。
「君があまりに真剣な顔をしていたものだから何か気に障るような事をしてしまったのかと」
「思い当たる節もないのに?それとも本当は隠し持ってるんじゃ・・・・」
「君以外の人から貰ってはいない。これは本当だ」
目を細くして睨んでみせるとプレゼントしたチョコレートを持ったまま真面目に答えるバッシュ。
「口にチョコレートつけてそんな事言っても説得力ないわよ!!」
「?!」
「違う、ここよ」
拭おうとする手をが掴み代わりに彼女の細い指先がバッシュの口元へ伸ばされる。
「・・?」
しかし何故か通り過ぎ頬を両手で挟むように止まったの掌。
「なんてね、ウ・ソ」
無邪気な笑顔と瞳の奥にある策謀。
あと少し顔を動かせば触れる距離で閉じられたの瞼につられるように自らも閉じる。
触れた唇がいつもより甘いと感じられたのは今日だからだろうか―――
それとも君を前よりも好きになったからか・・・。